先週、奈良の法隆寺へ行って参りました。
敬愛する正岡子規先生の、
「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」
の句碑前で佇んでおりましたら、
良いタイミングで
「ご~ん」
と鐘が鳴りました(笑)
お寺さんの、この鐘の音と言うのは、
いつ聞いても不思議に心に響きます。
ましてや除夜の鐘ともなりますと、
過ぎた365日と新しい年への畏怖までが去来し、
なんとも厳かな気分になります。
毎年帰省する実家は、国分寺から歩いて数分のところなので、
除夜の鐘の音が、とても近く聞こえます。
年越しのお風呂に入っている時に
聞いた年もありました。
人波に混ざり、始めの一つ目の鐘の音を
撞いた年もありました。
揺れる縄を上手く操れず、
思ったより小さな音だった事を憶えています。
「108と言う回数は、人の煩悩の数なのですよ。」
と誰かから聞いて、いつしか覚えています。
人の煩悩と言うのは、1つ2つと
はたして数えられるものなのかなあ?
と不思議に思いますよね(笑)
今年こそはと、少し調べてみることにしました。
除夜の鐘の由来とは?
中国の宋時代に起源があるといわれ、
鎌倉時代に日本へ。
今のように一般化したのは、
室町時代から江戸時代にかけてと言われています。
日本の仏教は、聖徳太子が広めたのですが、
平安時代に入り、最澄と空海により、
天台宗と真言宗という二派が広められます。
その後の鎌倉時代の武家社会では、
- 浄土宗
- 浄土真宗
- 日蓮宗
- 曹洞宗
- 時宗
- 臨済宗
などの新宗派が生まれました。
宗旨は国家安泰が主でしたが、
徐々に庶民個人の救いの道として、普及して行きました。
そうした中、布教活動として
除夜の鐘は有効なパフォーマンスとして
私たち一般庶民の間にも、根付いていきました。
ちなみに私が通っていた高校は浄土宗。
「南無阿弥陀仏」
と、心の底から唱えると、
全ての罪がゆるされるという宗派でした^^
除夜の意味は?
除夜とは何でしょう?
除という言葉には、
「古いものを捨て、新しいものを迎える」
という意味があります。
一年の最後の日となる大晦日は除の日、すなわち除日。
除夜=大晦日なんですね。
どうして鐘をつくの?
寺院の鐘は梵鐘と呼ばれます。
大晦日以外にも、
朝夕の時報や、法要の時などにも撞かれています。
そのありがたき響きを聴く者は、
全ての苦から逃れ、悟りに至る功徳があるとされます。
この梵鐘の功徳については、
多くの鐘の銘に記されています。
除夜の鐘の108個の煩悩とは?
まず煩悩とは、
人の心を惑わせ、悩ませ苦しめたりする心のはたらき
のことを言います。
- 欲望
- 怒り
- 執着
- 猜疑
これらは煩悩の代表。
ですがさらに、さまざまな分類があり、
合わせて百八になります。
もう少し詳しい分類が有りましたので、
お話ししてみます。
人間が持つ欲望や心の汚れは、
すべて6つの感覚器官からもたらされます。
それらが感じとる感覚からくる36個の煩悩に、
- 前世
- 今世
- 来世
の3つの時間軸をかけて、108つあるという考え方です。
1.六根 人間が持つ感覚器官
感覚や意識を生じさせ、
それによって人に迷いを起こさせる因となる六器官のこと。
- 眼(げん)
- 耳(に)
- 鼻(び)
- 舌
- 身
- 意
とされる。
2.六境 人間が感覚によって識別可能な対象
上記六根で認識する六識の対象となる6つの境界。
六塵(ろくじん)とも言う。
- 色境
- 声境
- 味境
- 香境
- 法境
- 触境
とされる。
今世だけでなく、前世や来世まで
合わせて108個と言う点が、とても感慨深いと思いませんか?
108個の煩悩を祓う力があるという信仰が、現在まで伝わり、
除夜の鐘の儀式となって続いているんですね~。
まとめ
この澄んだ音色にこころうばわれ、
大晦日に気持ちを新たにする理由が、
ほんの少しですが分かった気がしませんか?
日本人なのだなあと、しみじみ有難く心に落ちました。
今年は、どこでどのように
除夜の鐘をお聞きになるのでしょう?
最後までご一緒いただき誠に有難うございます。
どうぞ幸せな年をお迎えください。
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